日山協平成22年度 登攀技術に関する「指導員の教育と研修」及び「主任検定員養成講習会」




開催日 平成22年11月20日(土)〜21日(日)
会  場 特別行政法人日本スポーツ振興センター国立登山研修所
参加者     登攀技術研修会20名

        主任検定員養成講習12名
        日山協指導委員会(役員・講師)7名
        富山県山岳連盟5名

       新潟県山岳協会からは阿部さん(新潟山岳会)・LTQ(下越山岳会)
講習内容 登攀技術研修会 LTQの研修班
20日(土)AM 事前講習

       PM タイヤ落とし〜自己脱出〜ロア―ダウン
21日(日)AM ロア―ダウン時のロープの結び目の通過
      PM 確保技術その他 14:30〜閉講式 

講師 滝根正幹上級コーチ・堤信夫上級指導員・切嶋良上級指導員・大西寛上級指導員(研修会2班)

報告
20日(土)
05:00 自宅発
05:25 阿部さん宅
09:15 研修所着
10:00 受付
10:30 開講式
10:45 事前講習 室内人工壁
12:00 昼食
13:00 屋外人工壁(タイヤ落とし〜自己確保〜ロア―ダウン)
16:40 講習終了
18:00 夕食・情報交換

21日(日)
07:00 朝食
08:00 講習開始(屋外人工壁)
12:20 午前の部終了
13:00 再開
14:00 終了
14:30 閉講式
14:50 研修所発
17:55 阿部さん宅
18:50 自宅着(所用を足した後)

 
 事前講習 室内人工壁 講師 堤講師




設定状況
・ 7Pのマルチピッチルートを、50mダブルロープ」で登攀中、3P目にリード登攀者が約15m登った位置で5m墜落。制動確保にて停止。
・ コールするもののダメージのため応答なし。また、テンションロープのかかる残置ピトンには脱落、破損の可能性あり。
・ 確保者は負傷者の状況が判らないので仮固定により、システムからの自己脱出を図り状況の把握をすることにした。
・ 負傷者に声を掛けながら作業をすすめ仮固定を終えたところで、負傷者の意識が回復。
・ 状況は、意識があるものの腕を強打しているものの脚部は問題ない。
・ 確保者はロープ半分以下しかロープを送りだしていないので、確保者が確保しているテラスへロア―ダウンする。
・ 2P目ビレイ点から取付きまでは約70mあるので、ロア―ダウン(ロープの結び目の通過処理を伴う)で負傷者を降ろし取付きで救助を待つ。


20日(土) 講師 瀧根上級コーチ・切嶋上級指導員
PM タイヤ落とし〜システムからの自己脱出〜確保場所までのロア―ダウン
ウンチで吊上げた、タイヤを電磁スイッチで落とす。
制動確保で墜落を停めるのだが、昨今の技術書特にフリーの技術書、或いはロープメーカーの説明等ではダイナミックロープの伸縮で墜落時のショックを
緩衝するのでダイナミックビレイ(制動確保=少しロープを流す)は必要ではなく、スタティックビレイ(静止確保=ロープを流さず固定的に停める)で足りる
としている。そんな事なので、ボクも流すという意識は全くなかった。むしろ流すことで墜落距離が延びて、或いは確保ミスでグランドフォールが怖いという
意識があり、流すといういう意識はない。

 
 研修所 屋外人工壁



しかし、本研修は、アルパインを想定しており残置ピトンを利用する、もろい岩質の日本のアルパインルートの現実を考えればスタティックビレイは
確かにリスキーなのかもしれない。再考すべき点である。

さて、電磁スイッチでタイヤが落下。
やはりいつもの確保方法となりロープを最初から止めてタイヤの衝撃を待ってしまう。セルフビレーの範囲で一端、身体が浮き上がる。
まあ、取りあえず停めただけ。
そしてATC型の確保器のハーネス側にビナ一枚噛ませてワンターンして中抜きかミュールノット+オーバーハンドで仮固定

 
 タイヤ落としの仕掛け



ATC確保器より先(負傷者側)のロープにマッシャー掛けて支点に固定
2本のロープのうち、緩みがあるロープの弛みを取ってマッシャーの効きを確認・・・・マッシャー口を押さえて弛みを取り再度引き上げ効きを確認すること
マッシャーの下(確保者側)にスリップノットを結びバックアップ・・・・スリップノットの方向を間違えないように。
確保器の仮固定を解いて、確保器からをハーネスから外す。
確保支点に確保器・ロープを通してセットして仮固定
これで、確保者のシステムからの自己脱出の完了

ロア―ダウン
フリクションノットのバックアップのスリップノットを解いて
フリクションノットを緩めることにより確保器にテンションを移し完全にテンションを確保器に移してフリクションノットを外す
仮固定を解いてロープを送りだしてタイヤ(負傷者)をテラス(地面)に降ろす。

自分としては、制動確保にならず、静的確保となりドンと停めてしまったことが一番の問題だった。
それ以降の作業はとりあえず、多少もたつきがあったものの何とかロープを流すことなく作業ができた。


18:00〜
夕食・情報交換会

 
 一日の疲れを癒しましょ〜





21日(日)講師 堤上級指導員・大西上級指導員
朝食後準備をして、昨日と同じ場所である、屋外の人工壁。今朝も冷え込んで霜が降りている。
ワサワサ動く自分自身の登山等と異なり、研修会なので運動量が少ないので身体が冷えやすいので厚着をして準備をした。
昼近くならないと、陽が当らないので寒いからね。

 
確保器の結び目の通過



今日は支点確保でのロア―ダウン時のロープの結び目の通過を研修する
システムとしては、次の通り
ロア―ダウンでしているところ、ロープの結び目が近づいてきた。
エイト環を仮固定(ビナでワンターンしてクロス、もう一度折り返し2回のクロス)
テンションロープにブリッジプルージックを掛けて支点からマリナーノットでブリッジプルージックと支点を繋ぎブリッジプルージックを引き上げ効かせる
ブリッジプルージックの直下にバックアップのスリップノットを施す(結びの方向を間違えないこと)
効きを確認しながらエイト環を外す。スリングの長さを調整して結び目の後ろ側に
エイト環をセットしてスリップノットを解除してエイト環にかかる緩みを取り仮固定
マリナーノットを慎重に下側に引きながら緩めていく
完全にエイト環にテンションを移してブリッジプルージックを解除する
エイト環の仮固定を解除してロア―ダウンを続ける。

この作業のいくつかのポイントがあり
最初120センチスリングでエイト環でロア―ダウンを始めたなら、半分の60センチとエイト環+ビナの長さに結び目が来たときにエイト環の仮固定
すると120センチスリングをダブルに折って60センチにして使うとスムーズにいく。この位置を適当にすると、スリングの長さの調整に後々苦労する

身体の向きに気を付けてロア―ダウンさせる。

特別な結び方をしているわけではないのに慌てると手順も巻き方もおかしくなる。
個々の結びの組み合わせなので慌てなければできるはずなのだが、どうも慌てるなぁ
まあ、出来ていないということです。

本当は、同じ会で相棒がいると、地元に戻っても反復復習ができるが、なかなかそうもいかない。
とはいえ、個々の結びの組合せでシステムの構築がされているので個々の結びを慌てずキレイに結ぶことは個人でも練習はいつでもできるので
コツコツと確実に身に付けたいものだ。

昼食はカレーライス
寒かったので暖かい食事は有難い。

PM13:00〜14:00
・ダブルロープに巻き結びを掛けて片側のロープの緩みを取る際の注意点
・確保方法
・巻き結びのストッパーの注意
・ロープの折り返し部分への巻き結びは効かない
その他、現場で間違えやすい事について検証した。

14:25〜閉講式


北は北海道、南は熊本から全国からの参加者で皆様熱心に研修されていました。
判っているつもり・・・そういうことがいかに多いことか
多分、現場で何かあったとき、全体のシステムは構築できても、個々の細かい手順に疑問があり中途半端な作業しかできない気がします。

また、機会に恵まれたら参加させて頂きたいと思いつつ帰途についた。

今回使用した結び
仮固定  中抜き又はミュールノット+停め結び(エバンス)・・・ミュールノットの方が解除時にロープを滑らせてしまう可能性が少ない
巻き結び オートブロック(マッシャー)・ブリッジプルージック
その他  マリナーノット(カラビナへの巻き付け時に緩ませたりするとロレンツヒッチに変形して抜けなくなる可能性があるので注意 シャフト側に巻こう)
       スリップノット(巻き結びのバックアップに使うが緩む方向を間違わない様にすること) 
・・・・・・と、たったこれだけの結びしか使っていません。スリップノットとはいえ、タイオフの結び方です。

でもさ、人に見られている、上手にシュッとそつなくやりたい。などスケベエな功名心というかヨコシマな心が下手を打たせますなぁ。

その他
ムンターヒッチ(半マスト・イタリアンヒッチ)を用いる(セカンド確保等)時はHMS型の環付カラビナを用いること。
角型のカラビナは使わないこと。スタックする可能性あり。

オートブロック(マッシャー)をストッパーに(引き上げ等)使う場合、角型のカラビナを使うこと。HMS型は使ってはいけない。オートブロックがカラビナを通過して
逆セットになる可能性があり、その場合、ストッパーが逆向きしか効かないので、引き上げが困難になる。

グリップビレイを仮固定する場合、巻き結び系は効かない。=やってはいけない。




とにかく、慌てず確実に行うためにはうろ覚えではダメで考えずに結べるまで練習すべきです。この様な機会がなければ出来ると思いこんでいた
出来ると思っていたのは、うろ覚えで出来るつもりでいたというのが現実的な姿。

機会を与えてくれた阿部さんありがとうございました。
また、役員、講師の皆様、参加者の皆様に感謝致します。

最後になりましたが、地元の富山岳連の皆様、庶務方としてご尽力頂き感謝致します。快適に研修期間を過ごすことができました。


おことわり
上記記載は、自分の備忘録としてのものであり、記載・記述は当日の受講者以外の方は正確な理解はできないものと思います。
誤った理解でのシステム構築は自らの危険を招くだけでなく、パートナーに重大な危険を及ぼす可能性があります。
そのため、前述の内容については、受講内容の雰囲気程度と理解して下さい。

上記の記述に関し日山協及び担当講師になんらの監修指導の関係もありませんので、上記の記述内容を参考にしたうえで事故が発生しても
主催者である日山協、担当講師諸氏は当然、記載した私においても事故が発生した場合にその過程、結果等一切の責任を負うことができませんので
あくまで上記の記録は個人的な備忘録、研修会の雰囲気をお伝えする範囲であることを明記、ご注意申し上げます。


平成22年11月22日  LTQ


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